何か特別な事情がある人を除けば、基本的には多くの人にとっては旅行は楽しいものだ。出発の前日や前々日ともなれば、気分はもう最高。
そして高揚した感情で満たされたまま出発の日がやって来る。両手を高く突き上げ「ヒャーヤッター」って感じで家を出る。過ぎて行く窓の景色なんかも普段とは違い、格別のものだ。今、自分は新鮮で感動的で非日常の時間の中にいるのだ。と、旅の序盤はとにかく気分がとても良い。
ところがだ、実は気付かぬうちに「日常へと帰る日」は、第1日目からすでに静かにカウントダウンを始めている。やがて日程も残り3分の1を過ぎると、「旅の終わり」が何となく見えてきて切なくなる。まして最終日やその前日なんかは、消化試合のようなもので憂鬱な気分になったりする。
さて、そういう旅人の気持ちの移ろいについて少し考えてみる。
あれほど心待ちにしていた日々が、旅も終盤に入ると少しずつ色褪せてくるのは何故か?仕方の無いことなのか?
それは仕方の無いことなのだ。旅とはそういうものであると思う。
昔、ユーミンは恋模様を月齢にからめ『次の夜から欠ける満月より 14番目の月がいちばん好き』と表現した。
同じように「気持ちの高ぶり」という側面で見ると、出発の直前こそが頂点であろう。旅立ち後には、出発前の高揚感は湧き上がらないからだ。
しかし一方、非日常的な体験や新しい発見、憧れていたものとの出会い、心が震えるほどの感動などは、実際に旅に身を置かないと得られない。出発の日を境にした、この前後で違う気持ちの性質には、もちろん優劣はない。
ところが一般的には、「旅の楽しみ」というと多くの場合、出発後の事を言っているようだ。もし出発前のあれこれが「旅の楽しみ」に含まれないというなら、それはとてももったいない。
私なんかは、思いついて計画し始めた時点が旅のスタートで、妄想につぐ妄想で脳内では世界13周くらいしている。これなんかもうストレスの対極にある状態で、多分脳から幸福物質が出まくっているのだろう。
これがユーミンが言う「14番目の月」状態なのだが、私はまだ今のところ14番目には達していない。現在地は13番目の月くらいかなと思う。これからさらに出発の日に向かって、準備や下調べは最終の段階へと加速していく。
実際、長距離ツーリングに備えるためのバイクの改造やキャンプ道具の更新・新製品の導入、ルート選定・観光地チェック・地元料理への期待等など、こんな楽しい事は他にはあまり無い。ということで、タイトルにした様に旅の準備や下調べって、実は「旅の楽しみ」の内3割くらいはあるんじゃないのかなと思っている。
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