海外ツーリング、知らない道ならゆっくり走ろう

道路沿いによくある交通安全の標語の看板。「注意一秒、怪我一生」とかのアレの類いだ。どれも言っている中身はその通りなのだが、なんとなく押し付けがましい。しかも町内標語大会の発表展示会みたいで、むしろ興味がなくなる。

と、ずーっと前から思っているのだけれども、やはり事故無く走るのが一番。そして若い頃と違い、年を取ると標語に言われなくてもスピードは控え目になっていくのだが、それも気持ちにゆとりのある場面でのはなし。つまり休みの日ならゆっくり走れそうな気分になる。

話は変わるが、会社を退職した去年の夏まで6年半の間、車で通勤していた。往復70km以上の道のりだった。回数でいうと約1500往復だ。そうするとどういう事がおきるか。

信号のタイミング(もちろん歩行者信号の青点滅の傾向も)、流れの悪くなる交差点や車線、数台前を走る車両の挙動、路線バスや自衛隊の車列の有無、危ない自転車がいる所、路面の凸凹、除雪の具合、凍結の度合い、鹿が横断するポイント、ネズミ取りやレーダーパトカーの待機場所、覆面パトカーの出現しがちな所。これら全てを把握し(自然に覚えてしまった)、その結果、常に10台中上から2、3番手の速度で走る日々であった。もちろん車両はホンダ・アクティ、軽トラである。

慣れてしまうと習慣になってしまうと、遅くのんびりと走るなんて無理なのだ。ましてや仕事の一部である「通勤」という性格上、朝は遅刻をしないため夜は早く帰るため、いかにタイムを縮めて走れるかが運転の目的であった。

ちなみにその6年半のクルマ通勤で、パンク1回、軽微な自損事故1回、スピード違反1回というしょうもない経験もした。


バイクツーリングの話しに戻ろう。

中・大型バイクに乗ると、「常に自制心を持って乗る」という非常に大きなストレスというかエネルギーというか胆力が要求される。お前にできるか?と問われると、全く自信がない。今までできなかったからだ。乗るバイクごとに最高速チャレンジをしましたからね。前を走る他の車両は全て抜くような走り方をしてましたからね。

年をとるにつれある程度ゆっくり走れるようにもなったが、それでもマシンのポテンシャルを試したくなる事だってたまにはあるでしょ。これが事故のもとになる、重々分かっている。

大型バイクだと、一般の道路だと環境が良ければ時速80~120キロあたりが普通の気持ちのいいスピードだ。

そこで大型バイクで世界一周ツーリングに行く妄想をしてみる。路面がいいからとビュンビュン飛ばしていると次のような事がおきる。

①ぶっといヘビやトカゲが道路を横断している。気づくのに遅れブレーキ間に合わず、爬虫類に乗り上げて転倒。

②やりかけの道路工事の穴が突如出現。やはりブレーキ間に合わず、穴にはまって大転倒。

③ふらふらと前を走る車。抜こうとした瞬間車がUターン。ブレーキ間に合わず、車に激突。

どれもあり得そうな場面ではないだろうか。だけど時速60キロ前後のスピードで走っていれば、回避できるか、できなくても被害は小さいはずだ。

かと言って、「そんなゆるいスピードで君は走れるのか?他の車はみんなビュンビュンだぞ」とまたしても問われる。多分出来ません。

だから無理なんです。でかいバイクでゆっくり走るのは。

それでもゆっくり走る方が、総合的にみて得策ならば、ゆっくりしか走れない小型バイクに乗るしかない。それが私にとっての唯一の解決策、世界一周ツーリングを成功させるための唯一の解決策なのだ。

私は小型バイクを選択したことで得た、「強い自制心」の必要がない開放感。物理的に高速で走れない、あきらめと安心感。それとちょっとした負け惜しみの気持ち。

これらの感情を胸に、原付2種のCD125Tで世界一周に出る。

知らない道はゆっくり走ろう。初めての場所は何があるかわからない。

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