ツーリング7日目、レバノン山脈を越える本格的な山登りに挑む。峠の標高は約2600m、これを越えなければ日本に帰れない。
ヒーコラヒーコラ自転車を漕いで峠を仰いで登っていた時だ。「パーンッ」「パーンッ」と少し間を置いて乾いた破裂音が、走ってきた下の方から聞こえてくる。気になったので自転車を停めて音のする方を確かめてみる。何も見えないので、先に進む。
少し行くと、またあの音がする。「パーンッ」今度はさっきより音が大きい。明らかに近づいてきている。銃声?何を撃ってるんだろう?鳥は飛んでいないし、動物なんか全然見ない。
下の方を見ていると、白いメルセデス・ベンツのセダンがゆっくりと上って来た。メルセデスの助手席の窓は開いていて、そこからはなんと長い銃が出ていて、その銃口は上に向いている。まさか、標的はオレじゃないよな?
銃の先っぽを見せたまま、白いメルセデス・ベンツはなおもこちらに向かってゆっくりと走ってくる。レバノン山脈で人生が終わるのか…。
車のエンジン音が背中に聞こえてきた。メルセデスはゆっくりと通り過ぎていった。けっこうビビりました。
峠の頂上でしばしアレコレの余韻に浸った後、山道を下っていく。反対側に出るとすぐに霧がたちこめ、明らかに湿気が多いのが分かる。地中海性気候だ。ヨルダンの空港を出てから砂漠気候の中をずっと走ってきたこともあり、これほど明確に気候の違いが分かるのに単純に驚く。
レバノン国旗の真ん中にあるのがレバノン杉。大昔のメソポタミア時代から利用されていた良質の木材で、現在は絶滅危惧種。ちなみに国旗に植物が大きくデザインされているのは、このレバノンとカナダのみ。
この日は、ここから少し下ったところにあるブシャーレの街に宿泊。
ツーリング8日目(最終日)、世界遺産のカディーシャ渓谷を後にし、ベイルート国際空港へ。
ベイルート国際空港には、暗くなってから到着した。搭乗するルフトハンザのフランクフルト行きは深夜便で、翌日帰国。やはり中東はおもしろかった。
コメント