今(令和5年)から12、3年前中国に仕事で駐在していたのだが、その時社内の中国人と鉄道の話をすることがたまにあった。その頃既に中国は、高速鉄道界ではブイブイ言わせる存在になり始めていた。
一方、中国語で「緑皮車」という上の画像のような旧型客車も地方都市を結ぶ重要な役割があり、けっこう残っていた。
昔の国鉄の急行列車のような、ノスタルジックな雰囲気のするこういう乗り物は、筆者のような昭和オジサンの琴線に触れる訳で、乗ってみたいと口にすると彼ら彼女らは大抵顔をしかめて、言外に「こいつバカじゃないの」という反応を返してくる。
無理もない、遅くて不便でWi-Fiもない安いだけが取り柄のオンボロ列車に、敢えて乗ろうという変わり者は、都市部で生活する現代中国人の中にはいないのだ。
さて、この旅行当時の1996年に話は戻る。高速鉄道はまだ開業していないので、省をまたいだ移動は、陸路ではこうした長距離列車を利用するのが一般的だ。
11月12日、18:30広州発昆明行き 164次直快。
昆明まで2308キロ、乗車時間は49時間。雲南省へとこれから向かう。
この列車の終点は昆明であるが、私はそこから雲南省最南部のシーサンパンナ(西双版納)へと向かう。
中国を旅する人は、武漢や南京、済南といった漢民族の街より、チベットや新疆、雲南といった辺境地区のほうが中国は面白いという。もちろん私もそっち派だ。
そもそも「辺境」や「少数民族」といったワードが入るだけで、その地域は旅行者を振り向かせるアドバンテージがある。中国ならなおさらそうなる。
よくある、クラスの女の子で「帰国子女らしい」とか「ギター弾けるんだって」なんて噂で、視線を集めてしまうパターンと一緒だ。
手が届かない感、レア感がアドバンテージってやつだ。
20時前、定刻より少し遅れて列車は昆明に到着した。
昆明は特に面白くないので一泊した後、すぐにバスでシーサンパンナの中心都市、景洪(ジンホン)に行く。
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