1986年中国・パキスタン・インド・ネパールの旅⑫:カラッシュ族の村へ

翌日イギリス人と2人で、ブンブレットからさらに山1つ尾根を越えビリールという集落を訪ねてみようということになった。このビリールに行く方法は歩きしかない。

特に登山道があるわけではない。地図やコンパスも持っていない。村の人に聞きながら歩いて行く。けっこう雑なトレッキングだ。

ヤギだか羊だかを追い立てながら岩場を歩く老人に、ビリールまでの道を尋ねると教えてくれたのだが、この谷を詰めていくらしい。

もう一度言う。登山道ではない、案内の表示なんか一切無い。何時間歩けばいいのか、どの位の標高かも分からない。老人の言葉に従って登ってみるだけだ。

息も絶え絶えで、どうにかこうにか尾根まで登りきると、はるかアフガニスタンの山々が見えた。(一番上の画像)

谷を登りきって尾根に出たので、ビリールに向かって山を下る。

トレッキング開始から7時間かかってようやく谷間の開けた所までたどり着いた。

きれいな川が流れ、その水を引いている小さな水路があった。疲労困憊の私たちは、ひざまずき顔を洗い、うがいをした。水は冷たく、生きているのがわかる。

黒い服の少女たちが向こうから私たちを見ている。外国人が山を越えて来て、水を浴びているのを観察していたのだ。

3人とも黒い服に、頭には白い飾り、赤いネックレスを幾つもかけていた。カラッシュ族との対面であった。

男が1人近づいて来て何か言った。私たちはブンブレットから来た、ホテルに行きたいと身ぶり手ぶりで男に言った。

彼はついて来いという感じで前を歩き出した。やがて男は笛を取り出し、吹き始めた。20センチ位の横笛のきれいな音。

その音色に導かれ、痛い足を引きずって歩いていた。不思議な感覚であった。

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