1986年中国・パキスタン・インド・ネパールの旅④:列車はいよいよ西域へ

上海を出て3日目の午後。写真は甘粛省武威-張掖の間。列車は、祁連山脈とゴビ砂漠に挟まれた細長い河西回廊を行く。長い客車を牽引するのは蒸気機関車。

夜には酒泉、嘉峪関、玉門と停車し、そこから先はいよいよ西域となる。

軟臥コンパートメントの内装は、ウッドがたくさん使われた上質な個室であった。

また、時々入れ替わる乗客は人当たりもよく、上海で出くわす雑な人間とは違い、4人コンパートメントは落ち着いた雰囲気があった。

隣りの車両は食堂車で、時間になると白い上着の食堂車の人がメニューを持って来る。

料理はどれもうまかった。

私の後ろの男、左手にタバコ、右手に箸を持つ。おかず→ご飯→ご飯→タバコ、おかず→ご飯→ご飯→タバコ。本当にそんな感じで食べ物とタバコを交互に口にしていた。

一体どのような人生を過ごしてくればそうなる?

停車中の買い出しも重要なイベントだ。なにしろ暇で、車内でできることは多くない。


周りの乗客と筆談をしても、互いの関心はあさっての方向で、いまいち盛り上がらず、長続きしない。

初めて見る砂漠の景色の珍しさも、半日も続けばやがて当たり前になり、感動だって薄れていく。

食堂車は食材不足になっていき、頼めるメニューは少なく、味も単調で利用しなくなる。


退屈に耐えることにも慣れてきたころ、終点ウルムチが近づいて来た。

農村風だった窓の景色は、民家が現れアパート群になり、商店や通りを歩く人々が多くなる。

乗客は荷物をまとめ始め、気の早い人は扉が開くのをもう待っている。

列車は速度を落としていき、レールに軋む音と共にホームの端が見えてきた。前方から流れてくる駅の表示は「烏魯木斉」、確かにやって来た。ガタンと1回揺れると、列車は止まった。長い鉄道の旅だったが、終わってしまった寂しさが少し残る。勝手なもんだ。

同じコンパートメントの気のいいおばさんが駅でタクシーの手配をしてくれて、この日の宿「烏魯木斉賓館」へと向かった。

明日から本格的なシルクロードの旅となる。

おまけ↓

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