ウルムチの街を散歩してみる。通りの反対側は大きなバザールのようだ。人ごみとざわめきにつられて、中に入ってみた。民族衣装を想わせる小さな飾りのある服を吊るしている店や刺繍のある帽子の店。生活雑貨の店、食べ物屋が軒を連ねる。
さらに奥へと進んで行くと、目にしみる煙と鼻をくすぐるにおい。客を呼ぶおじさんの声に引き寄せられ、一軒の屋台に座った。肉の串刺しが並べられ、炭で焼かれている。
香辛料は3種、リズムよく肉に振りかけると出来上がりだ。香辛料の刺激がたまらなく美味かった。
写真をお願いした。シシカバブ屋の店主の少し困った様な、はにかんだ様な表情がいい。
ウルムチは新疆ウイグル自治区の首都でけっこうな都会であった。旅行者にとっては取り立てて長居したくなる場所ではなく、私も早々に次の街へと移動することにした。トルファンへ行く。
翌日10月10日、朝9時のバスに乗る。
中国は全国土が北京時間なので、中央アジアに近いこのあたりは、朝8時でもまだ暗い。
砂と礫の一本道を、バスはトルファンのある東南方向に走る。遅い朝焼けに反射した金色の道路が地平線まで続いていた。
何もない所で何の脈絡もなくバスが停車した。トイレ休憩らしい。運転手も乗客も好き勝手に自分のポジションめがけ散らばっていく。
それ、乾いた大地に放尿だ。小便がジョボジョボと泡を残し吸い込まれていく。
爽快だ。「こっちの方」が全然いい。
「こっちの方」ではない方というのは、もちろんトイレを指す。ここでお待ちかね、みんな大好き中国トイレ事情タイムだ。
砂漠だオアシスだと浪漫な事ばかり書いて、汚い話しはスルーかよとご心配かけたみなさま。不肖筆者、そんなことは致しません。でもゴメン、画像はないよ。
さて、トイレ先進国日本で快適に暮らす我々無垢な日本人にとって、中国のトイレ事情が相当ヤバイことは、知っている人も多いだろう。
上海の黄浦公園公衆便所、入口から中を伺う。仕切りや扉が一切ないオープンスペースに、しゃがんでる人がいる。
すげー、「歩き方」に書いてあった通りだ。
えー、と、とりあえず今回は小だけで…。すごすごと引き返す。
後日どこか別の場所で再挑戦。前回の突撃では、不覚にも細部を観察する余裕がなく、あえなく敗退してしまった。
今回は怯むことなくやり遂げてみせる。
長方形の短い辺が入口で、長い辺の片方が小便側だとしよう。もう一方の長い辺が、大側となる。大側は、ワンステップ高くなっていて、上がった舞台に幅25センチ程度の溝が長辺沿いに一本作られていて、その溝をまたぐ感じで位置に着きズボンを下ろす。溝は深さ15センチ程度で、水が片側から流れ出ている。溝に落とした己れの作品は、流れに乗って建物の外へと出て行く案配だ。
ちょっと考えてみよう。この方式だと、左右に人はいない、前後に並ぶスタイルとなる。つまりだ、あなたの前に誰かがしゃがむと、あなたはそいつのひりだす様と流れてくるホヤホヤのブツを否応なく目にしてしまうということになり、後方に誰かがつけば、あなたの赤裸々な一部始終を後ろのやつに曝してしまうという訳だ。
どちらが好みかはあなたの判断に任せるが、私なら流れてくる水の最上流に陣取り、壁を見ながらゆっくりウ○コをする。
上記流れる方式の他に、掘られた穴に落とす方式もあるが、肥溜めなので強烈に臭いぞ。
日本人なら日本から持参の真っ白なトイレットペーパーか現地のゴワゴワなペーパーを買って持っていくことだろう。ところがローカルの猛者たちの使用アイテムはすごかった。
新聞や雑誌のページ、何かの箱の断片なんてのも見た。
宿のトイレはいくらかマシになるが、そこは中国だ、侮ってはいけない。
大の方は一応個室タイプで背丈ほどの左右仕切りがある。問題は扉だ。内側からかける鍵がついていないのが多い。蝶番を支点にパタンパタンしてるだけ。中国人はノックなんて文明的な手続き無しで、いきなりガバッと扉を開け、空きを探していく。
水洗が壊れたままのトイレも多かった。壊れてないのに流されていないのも多かった。
便器のふちギリギリまで積み重なったウ○コの山、どうにもならない感じにただ苦笑い。見なかった事にしよう。
1980年代中国を旅した人なら、誰でもこの程度の経験は嫌でも出来たはずで、土産話には事欠かなかった。
遠くに緑が見えてきて、やがてポプラ並木の道になりロバの荷車を追い抜く。ウルムチから4時間半後、オアシスの街トルファンに到着した。
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