レギュレター。正確には、レギュレター/レクチファイヤ(以降レギュレター)で、電気系コントロールユニットのこと。
ざっくり言うと、レギュレターは電圧を調整してバッテリーに適切に充電する装置で、レクチファイヤは発電した交流電気を直流に変換する整流器。
このレギュレターが壊れると、主にバッテリーの具合が悪くなり、バイクはやがて走らなくなる。とても大事なお仕事をしているので、時々気にかけてあげる必要がある。
一昨年(2022年)の5月のある日、たまたま走る期間が空いたので、テスターでバッテリーの電圧を計ってみると、11V台。雪どけ明けにフル充電しておいたので、この値はおかしい。まだ2ヶ月もたっていないのに。再度フル充電して、試運転しエンジン回転数を上げてみるが、13Vには届かない。バッテリーがダメなのか充電がダメなのか、それとも両方なのか。
試しに予備の新品中華レギュレターに付け替えてみると、しっかりと充電しエンジン回転数を上げれば、14V後半まで電圧は上昇する。
という事で、レギュレターが死亡したというのは分かったものの、如何せん寿命が早すぎる。2年前に交換したばかりだからね。しかもこの2年間なんて、そんなに激務ではなかったはずだ。元の純正品は30年以上使えたわけだし。
こいつのポテンシャルがかなり低かったのだろう。いわゆる中華品質というわけだ。
という事は、付け替えた新品予備のこいつも途端に疑わしく見えてくる。なにしろ同じ出身地だからね。今はまじめに動いているレギュレターを眺めながら思った。
君は戦力外通告だな、即刻予備組に戻ってもらおう。やはり世界一周には実力の伴ったちゃんとしたプレイヤーが必要だ。
そこでネットの中を行きつ戻りつして見つけたのは、MOSFETレギュレター。かつて一世を風靡したらしく、けっこう情報が出てくる。そして高性能だという。ところが情報を更に吟味してみると、バッテリーには優しいが、ステーターコイルには厳しいらしい。最悪コイルが焼けてしまう事もあるという。
私にはその原理がさっぱり理解できないが、キレたらやばいヤツだというのは分かった。
そのMOSFET情報と共に、対比するように見え隠れしているのが、三相オープン式レギュレターの存在。
ならばとその三相オープンの姿をネット情報の中に追っていくと、特に海外で評判がいい。
またこれについても今一つ良く理解出来ないが、灯火類をLEDに交換した(発電能力に対し使用電力を下げてしまった)バイク等にいいらしい。そして、コイルに負荷がかからない様になっているという。どうやらけっこう面倒見がいいヤツの様だ。
いっちょこの三相オープン式レギュレターに賭けてみるか。どのみち消耗品だし、灯火類をほぼLEDに改造した我がCD125Tに向いていそうだ。さらにVストローム1000等限られたバイクにしか付いてないところもネタ的に面白そうだ。もう125㏄の電気系統なんか余裕で捌いていくんだろうね。
という事で、スズキの純正部品倉庫からやって来た、期待の助っ人は新電元製の三相オープン式レギュレーターSH847。デカい図体のため当然オリジナルの場所には収まらない。
最終的にこの位置で働いてもらおう。高額のギャラで招いたんだから、長期間がんばってくれなきゃ困るんだからねっ!レギュレターは配線等付いていないので、自作する。そしていい機会なので、バイク側の古いカプラーと端子をリニューアルする。端子には念のためハンダを流しておく。
準備完了!君の実力を見せてもらおう。じゃあいくよー。それ、スイッチオンだ。
んんっ?イグニッションが反応しないぞ?錯覚だったのか?
もう一回スイッチオン。やはり何も起こらない。
なぬ?通電してない?
ダメじゃん。よくない感情が胸の中を頭の中をグルグル回る。気を取り直し、バッテリーをテスターで測るも電圧は問題ない。
レギュレター側5線、バイク側6線のせいか?
レギュレターのプラス線が、電圧監視線回路と共用になってないようだ。電圧情報が来ないとイグニッションオンにならないという事だ。
試しにバイク側電圧監視線をバッテリープラスに接触させてみると、通電してエンジンもかかる。かかるのはいいのだが、常時電源なのでスイッチオフでも通電してしまう。これではダメだ。
レギュレータープラス線に渡り配線を作り、バイク側の電圧監視線に繋いでもイグニッションは反応しない。
さらに試行錯誤した結果、レギュレタープラス線の渡り配線を、バッテリープラスに直結すると通常通りの通電回路となった。何故この配線で回路になるのか私には理解不能。念のため渡り配線途中にヒューズをかませておく。なにはともあれ作業終了。
バイク側の電圧監視線は、6線式の予備レギュレター用に残しておく。
因みに、JA03などの新しめのCD125Tは、バイク側5線のため、5線レギュレターであればポン付けできそうだ。
さて、改めてエンジンオン。問題なくエンジンがかかり、少しアクセルをふかしてやると直ちに充電を開始し始める。試運転に出かけ、動作を確認する。回転数を上げて走っても14.8Vより上には電圧は上がらず、しっかり制御されている。バッチグーじゃん。
その後2シーズン経過した2024年春現在、変わらず問題はない。ちなみに1日走って、レギュレター表面をさわっても常温で人肌以上の温度になることはない。多分125cc程度の電力事情では、どうということはないのだ。
あとは本番でも「縁の下の力持ち」でい続けて欲しい。
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