ホンダCD125T:エンジンの高山病対策に、パワーフィルターを用意した

標高4000mを越える地域や峠って、世界一周の途中にはけっこう多く出現する。標高3000mレベルの場所ならもっともっと多い。人間が高山病になるのと同様に、吸気系がキャブレターのエンジンは空気が不足しガソリンが濃くなり不調になる。アンデス山脈を越える時にバイクが動かなくなって、途方に暮れたりするのは非常にマズイので、その対策について考えてみたい。

地球は高い所に上がるほど酸素濃度は薄くなる。3000mで平地の約7割、4000mで平地の約6割まで下がる。それでも筆者が、富士山3776mクンジェラブ峠4733mなどに行ったとき高山病にはなっていない。全員がなるわけでもないので、体質によるものらしい。しかしながらキャブ車は必ず調子が悪くなるので、人間の肺機能や循環機能の方が古いエンジンの吸気系より優れているのだろうか。

では、キャブ車バイクはどのあたりの標高から調子が変化していくのだろう?まるで分かりません。バイクではなく人間(私)の経験を思い出してみる。北海道でも標高の高い、旭岳2291m羊蹄山1898m利尻山1721mに登った時は空気の薄さは感じなかった。富士山奥穂高岳3190m、槍ヶ岳3180m剣岳2999mの頂上直下の急登の時は呼吸が少し早くなった。登山よりも自転車の方がきつく、2500mを越えると苦しくなっていた。人間(私)だと2500m以上あたりが、酸素濃度の薄さを最初に体感できる標高かもしれない。

バイクはどうか。バイクや車ってノーマル車の場合、使用環境に対してけっこうマージンを広くとっているので、レーサーと違いそれほどシビアなセッティングを要求していないはずだ。キャブ車の場合でも日本国内の使用環境は、標高なら0〜2000m前後、気温なら0℃〜30℃あたりが標準仕様のセッティングに違いない。CD125Tもそういう仕様に違いない。そう思いたい。

さあ、ここからようやく本題です。標高を上げれば酸素濃度が薄くなる=燃調(混合気)が濃くなる。つまり空気が足りずガソリン濃度が濃くなり、エンジンが不調になってくる。この場合燃調(混合気)を薄くする方向にセッティングをする。通常はキャブレターのメインジェットの番手を小さくする(ガソリン通路の穴径を小さくする)のが、王道であろう。もちろん下界へ下りてくればメインジェットを元の番手に交換する。(プラグの焼け具合は同じと仮定して話しをする)

でもね「車体からキャブを外してキャブを開け、メインジェットを交換し車体に戻す」この作業、ツーリングの途中で何度もやりますかね?言葉で書くと簡単だけど、単キャブのCD125Tと言えどメインジェットの交換って何気に面倒ですからね。しかも小さい部品なので無くしたら悲惨。あ、そうそう、

だからフュエルインジェクションのバイクにしとけって言ったじゃん

という叱咤激励アドバイスは今は要りませんので。あしからず。

そこで思いついた。ガソリンを絞るのではなく、空気の取り入れを増やすのだ。空気流入の抵抗が大きいエアクリーナーを使わずに、一旦パワーフィルターに交換する。これで空気の流れを早くし、より多くの空気をキャブレターに送り込むやり方。標高の高い空気の薄い場所でもなんとか燃調を補正して、がんばって走ってもらおうという作戦だ。ホントに効果があるのかは分からない。取り敢えず最初の2500m地点(多分キルギスからタジキスタンのどこか)で、エアクリーナーボックスからのインテークパイプをキャブから外し、パワーフィルターに付け替えて4000m越えの峠に挑もう。

90度曲がりタイプでないと、キャブレター後ろ側の空間が狭くて入りません。取り付け径は43mm。
パワーフィルターを付けるとサイドカバーは付かなくなるけれど、それはしょうがない。


準備として、エアクリーナーボックスからキャブレターまでを繋ぐ、インテークパイプのメンテナンスをする。このゴムパーツ、経年劣化で少し硬くなっているので、力まかせにこじったりして割れたら精神的ショックが大きい。ゴムパーツ本来のしなやかさを取り戻したい。ちなみに新品純正部品は終了していて手に入らない。

タイミングよく「WEBヤングマシン」にゴム部品の復活方法が出ていたので、まねしてみる。

エアクリーナーボックスから外したインテークパイプ。やはり少し硬い。
車のオイル交換で出た廃油をペットボトルに入れる。
灯油を1/3程度入れてから廃油で満たす。
約2週間漬け込んだインテークパイプを引き上げる。
きれいに拭いて、感触を確かめる。かなりしなやかになった。
さらにシリコンスプレーをかけてなじませる。新品同様は大げさだが、若返りに成功。


それでは、用意したパワーフィルターがちゃんと付くのか、エンジンがかかるのか試してみよう。冬の間外しておいたバッテリーを充電し、車体に戻す。次に若返らせた元のエアクリーナー・インテークパイプを正規の位置に取り付ける。さらに90度程度下にひねってパワーフィルターが収まるように空間をつくる。

ゴムがしなやかになったので作業がやりやすくなった。この空いた空間にパワーフィルターをねじ込む。
ぎりぎり入った。標高が低い場所ではパワーフィルターを外し、インテークパイプをくるっと回してキャブレターに繋げれば、通常モードの吸気系に元通りになる。


長い冬眠から無理やり起こされたエンジンはキック10回とセル5回くらいで目覚めてくれた。特に2次エアーを吸っている様子もなく吹け上がりもいいしアイドリングもするので、ひとまずパワーフィルター装着は成功。エアクリーナー経由の通常バージョンでも正常通り吹け上がり、アイドリングともに問題なし。

プラスのドライバー1本で交換作業ができるので、キャブのメインジェット交換より全然楽だ。あとは本番の標高3000mや4000mでちゃんと走ってくれれば大成功ということだ。だめならエアクリーナーを外す(ゴミが入り危険)か、キャブのメインジェット交換という手段が残されている。

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