「歌は世につれ世は歌につれ」その時代の流行り歌と世相は、互いに相関があるということわざだ。
天地真理『恋する夏の日』の頃はテニスブームがあったし、聖子ちゃんの『SWEET MEMORIES』がヒットしていた頃は、缶ビールのサイズの種類が今とは比べられない程多かった。『泳げたいやきくん』の件などは多くの人が知る社会現象だ。
さて、今日は本題である「旅と歌謡曲」について考えてみたい。
例えば昭和49年のレコード大賞曲『襟裳岬』、北海道に行く機会があれば、なんとなく寄ってみたい。行って自分の目で「何もない春」を確かめたい。『襟裳岬』にはそういうパワーがある。さらに言うと、この大ヒットの熱狂を知らず襟裳岬に行っても、少し物足りないかもしれない。
他に曲を聞いて行ってみたくなる例としては、『京都慕情』『知床旅情』『中之島ブルース』『津軽海峡冬景色』『中央フリーウェイ』『青葉城恋歌』『渡良瀬橋』などかもしれない。これら名曲の数々は、曲名イコールほぼ地名なので強い。旅行のきっかけになるには十分かと思う。
次は具体的な地名は出てこないが旅情を誘い、聞く人それぞれの中で旅への想いを巡らせることができる曲。
『真夏の出来事』『熱き心に』『遠くへ行きたい』『岬めぐり』『風をあつめて』『海を見ていた午後』『into the world』
最後は、一人称視点+地名の名曲。
『瀬戸の花嫁』『ブルーライトヨコハマ』『あずさ2号』『飛んでイスタンブール』『さらばシベリア鉄道』『雨の御堂筋』
これらは歌詞が自分視点で書かれているので、あたかも追体験しているような気分になれる。
特急あずさの乗客になったり、穏やかな海で見送られる花嫁になったり、どうせおとぎ話のような恋だったとホントは砂漠の無いイスタンブールで失恋したり。
改めて見てみると、こんな風に旅をイメージした歌謡曲はけっこう多いのがわかる。
それにしても、どれも珠玉の名盤だ。
みなさんにも自分にとっての代表的な「旅の歌」があると思う。
私のナンバーワン、ザ・旅の曲は、久保田早紀『異邦人』。昭和54年(1979年)のこの曲は、シルクロードの乾いた砂埃感すら漂わせる、上に挙げたどの曲とも違う没入感得られるいい曲であった。
この曲に刺激を受けた私の旅心は、その後次第に膨らんでいき、『異邦人』の描いた世界を見てみたくなり、昭和61年(1986年)にシルクロード方面へと実際に旅立つことになるのであった。
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